野村はる個展「Lemon」の開催のお知らせ

野村はる
Solo exhibition
-Lemon-

2022.11.19Sat.-12.1Thu.
全日開廊 12:00-19:00
作家在廊 19・20・26・27


このたび、KOMAGOME 1-14 casでは、野村はる個展「Lemon」を開催いたします。
野村はるは1981年埼玉県生まれ、東京都在住のペインターです。幼少期より姉の影響で絵に親しみ、一時は絵から離れたものの、2006年より再び独学で絵を描きはじめました。2015年には美学校(東京神田神保町)の講座「アートのレシピ」を受講。現代美術家の松蔭浩之と三田村光土里のもとで現代美術を学び、絵画作品だけでなく、映像や立体作品も制作するようになります。講座を修了後は「TRANS ARTS TOKYO 2016」(東京神田錦町、2016)、「DE-PROGRESSION」(Drews Exhibition Hall、コロンビア、2017)など、国内外のグループ展に参加する他、自ら展示を企画するなど、活動の場を切り拓いてきました。
一方で、野村個人に目を向けると、20数年にわたって子育てをしてきたシングルマザーとしての側面があります。多くのひとり親、特に母子世帯がさまざまな問題を抱えているように、野村も経済的な問題や社会の無理解に直面してきました。一時は、子育てが難しいほど心身ともに追い詰められた野村でしたが、そんな彼女を救ったのが「絵を描くこと」でした。

「自分が何ができるのか分からなくて、どう生きればいいんだろうってなったときに、何かしようと思って、たまたま目の前にあった色鉛筆を手にとって絵を描いてみたんです。そしたら心が癒やされたっていうか、自分は絵を描きたいんだなって、自分がやりたいこととか、やれることが分かった気がして(略)そのときは少なくとも絵に救われて、それからずっと絵を描いています」(野村はるインタビューより)

本展「Lemon」は、母親業を経験した野村が、再び絵を描くきっかけになった自身の子どもをモデルにした絵画作品で構成されます。展覧会タイトルの「Lemon」は英語のスラングで「欠陥品」や「不完全」を意味し、かつてひとり親世帯が差別的な意図で「欠損家庭」と呼ばれたことと重ね合わせています。
厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子世帯は123.2万世帯、父子世帯数は18.7万世帯で、平均年間収入(母または父自身の収入)は、それぞれ243万円、420万円と報告されています。特に母子世帯が抱える貧困の問題をはじめ、ひとり親世帯は依然として支援が必要な状況に置かれています。

「私たちは『普通の家庭』からはみ出したいびつなレモンのような存在ですが、そのでこぼこが却って反射によって輝き、人生に瑞々しさを与えていることも知っています。今回はそんな、いびつながらもキラキラした家族の形、生きる輝きを描いていけたらと思っております」(本展に寄せて)

表現者として、ひとり親として、絵を描き生きてきた野村の初個展をご高覧いただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。

作家プロフィール
ペインター。1981年埼玉県生まれ、東京都在住。
幼少期より姉の影響で絵に親しむ。一時絵画制作から離れるも、2006年に独学で再び絵を描きはじめる。2016年美学校「アートのレシピ」修了。油絵を中心に、アクリル画、映像、立体などのメディアを用い、日常生活の中に浮かんでは消える「誰か」の感情や、自身の経験をもとにした死生観をテーマに制作を行う。主なグループ展に「TRANS ARTS TOKYO 2016」(東京神田錦町、2016)、「DE-PROGRESSION」(Drews Exhibition Hall、コロンビア、2017)、主な企画に「現代アート展示 雑居」(くすのき荘、東京、2016)など。